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家族との時間、絆を深める料理代行サービス

家事支援の現場第2弾は、 “食”を支えるサービスに密着します。 食材の買い物は?調理器具は自宅のもので足りるの?味付けは大丈夫?子供にも食べられるの?片付けは?――。
暮らしには、欠かせない家庭における“食”となれば、いろいろと疑問や不安も伴うもの。今回は、料理を提供する家事支援サービスを活用する家庭にお邪魔して、サービスの内容とともに、利用者の声を聞いた。

記事のポイント

  • 調理だけでなく、献立の提案から買い出しまで。希望にも応じて対応してくれる
  • 子供向けや減塩料理など利用者ニーズを踏まえ対応
  • 料理代行サービスは、サービス業者によって強みはさまざま。自分の好みに合わせて使い分け
  • 食事準備の時間・負担を減らし、仕事や家族と過ごす時間などを充実
要望に応じて買い出しにも対応し、自宅の調味料をつかいながら作り置きする

■「買い出し」も頼める作り置きサービス

7月下旬の土曜日午後。東京都内のマンションに大きなボストンバッグと、スーパーのレジ袋を抱えた男性が訪れた。迎え入れた家主は、佐々木さん夫妻。45歳のご主人と39歳の奥様は、3歳の長男と2歳の長女をあやしながら、慣れた雰囲気で、男性をキッチンへ招き入れる。
男性は、料理の作り置きサービスを展開する株式会社シェアダインに登録するYahan(やはん=シェアダイン登録名)さん。キッチンに入ると、レジ袋から買い出しした食材を並べ、保冷が必要なものは冷蔵庫へ。シェアダインの作り置きサービスは、3時間の調理コースが平均的な利用だが、利用者の要望に応じて、調理時間の一部を使って買い出しにも対応する。この日は買い出し付きだ。
この間、夫妻は、リビングで子供の相手をしたり、パソコンを立ち上げて仕事のメールをチェックしたり、思い思いの時間を過ごす。
フランス料理が専門でありながら、直近は有名ホテルの京料理レストランで働いていたYahanさん。佐々木さん夫妻はYahanさんのリピーターだ。昨夏にシェアダインのサービスを使い始め、スケジュールの空き状況や子供向けの料理が作れるかどうかなどを考えながら、5~6人のシェフの中から好みの料理人を選んでいるという。この日は、「共働きなので、子供と家族で過ごす時間を十分に確保しつつも、ちょっと本格的な料理が食べたくなった」と、Yahanさんを選んだ理由を奥様は明かす。

家庭にある鍋など調理器具や冷蔵庫を使い、料理をつくっていくYahanさん

■3時間で10~12品目が定番

食材を一旦整えるとYahanさんは、早速、調理を始める。佐々木さん宅のキッチンの引き出しから自分の調理場のように鍋とフライパンを取り出すと、支度を始める。Yahanさんが持参する調理具は、包丁と低温調理器、ミキサー程度だ。家庭によってキッチンの設備は異なるが、「基本的にコンロが1口と電子レンジがあればできる料理でメニューを考えている。大抵の方が、コンロの数だけ鍋とフライパンがありますから」と、Yahanさんからは余裕が垣間見える。
最初に野菜を手際よく切って鍋へ投入し始めたYahanさんは、「煮込み料理が得意なんで。いろんな料理のベースにもなりますから」と、これまでの経験値を生かして味付けしていく。もちろん、自宅の調味料が『減塩しょうゆ』なら、塩分控えめで作るなど配慮するのも、家庭向けに提供する出張料理サービスの特徴と言える。
シェアダインの出張料理サービスは、約3時間キッチンをつかい、作り置き料理を10~12品作るのが平均的なプランとされる。4人家族で夕飯5日分(20食)の想定だ。おおむね冷蔵で3日以内、冷凍で1週間以内を念頭に置くが、外気温が上がる夏や湿度の高い時期など、季節や保存環境に応じて衛生に気をつかう。「夏場はなるべく食べるときに再加熱する料理を多めにし、そうでないものは早めに食べてもらう。」
なぜ、佐々木さん夫妻は、シェアダインを頼むようになったのか。

■きっかけは会社での利用紹介

佐々木さん夫妻がシェアダインを利用するようになったきっかけは、経済産業省が昨年に実施した令和5年度補正予算「家事支援サービス福利厚生導入実証事業」だ。会社が福利厚生として利用促進する家事支援サービスに対して、国が費用の一部を補助する事業でシェアダインを利用した。当時は費用負担がほぼなかったが、補助金がなくなった現在も自費で利用を継続している。家事や育児など総合的な家事支援サービスを提供する「きらりライフサポート」(運営会社:株式会社ぴんぴんきらり)と併用し、いずれも料理サービスを頼む。
「買い出しで30分、料理で1時間、さらに片付けにも時間がかかる。その間、子供とのコミュニケーションが片手間になってしまいがちで、仕事終わりから子供が寝るまでの約3時間、子供と関わる時間の質をもっと上げたいと思ったんです」と、2つの料理代行サービスを併用する理由を説明するご主人。以前は、食材や作り置き料理の宅配サービスを使ったものの、料理する奥様にとってはやっぱり時間がとられる感覚があったという。共働きだと、長男は幼稚園、長女は保育園で、夫婦で役割分担しても朝夕の送り迎えは慌ただしくなるという。夕方は特に、帰宅してすぐ、お子様から「ご飯が食べたい」と言われることも多く、夕飯の買い出しもままならないという。奥様は、「キャリアも捨てたくないし、やりたいことをやりたい。でも子育てだってちゃんとやりたい。全部やりたいけど、仕事復帰のため、長男も1歳未満で保育園に預けたんです。少しでも子供との時間を長くするために選んだのが、アウトソーシングできるものはアウトソーシングして、子供との時間を増やそうという判断でした」と、話す。
出張料理サービスを使う時には、夫妻のどちらかがテレワークして、子供を迎えに行き、帰宅したときには、夕食の準備を整えてもらうようにしているという。「子供も満足してくれて、夕方から寝かしつけまでの間は、家族の時間をたっぷり確保できます」とご主人。
今では、週1回だった料理代行サービスは、最近では週2回に増やしている。

料理代行サービスのかたわらテレワークすることも多いという佐々木さん夫妻

■夫婦のどちらかが夜遅ければシッター

シェアダインの場合、平均的な利用(20食分)でかかる費用は税別1万2000円程度だという。ご主人は、「補助とかがあって、もうちょっと費用負担が軽いといいな、というのが正直なところですが、それ以上に、子供と過ごす時間を作りたいし、プロが来るので、レストランのような味が楽しめるなら、やっぱり使いたい」と話す。
さらに、夫妻は、料理代行サービス以外にもキッズシッターといった家事支援サービスも活用する。長男の幼稚園や長女の保育園は夕方まで。どちらか1人が仕事の会食や残業が入れば、もう1人が子供2人を迎えに行き、家では相手することになる。そんなときのため、夫妻は、どちらかが家に帰れない場合には、不在にする側が相手の家事負担を減らせるように、キッズシッターを頼んでいるという。「どちらかに家事や子育ての負担が偏らないように、アウトソーシングしている」(佐々木さん夫妻)
家事支援の利用に伴って家庭にはさまざまな人が訪れる。奥様は、「私自身は(ほかの人が家に上がることに)あまり抵抗感がない。むしろ、家事支援サービスのおかげもあって、人見知りしない子になった」という。佐々木さん夫妻の出身地は、ご主人が鳥取県、奥様が奈良県で、実家や親族に家事の助けを求めることは容易でない。
シェアダインやきらりライフサポートはいずれも、日々の食事のほか、お弁当の作り置きサービスなど、利用者の要望に応じたサービスを提供する。奥様は、家事支援を使い分ける理由について、「サービスを実際に使ってみると、得意の料理分野を持ついろいろなシェフを選べるシェアダインと、掃除などほかの家事支援サービスも手掛けていてシニアのスタッフの方も多いきらりライフサポートで違いはある。どんな料理を作り置きしてほしいかによって、サービスを使い分けている」と、話す。

調理過程の様子

■食べるタイミングや保存方法は対話で説明

保存容器に詰められた料理が食卓に並び始めたのは、Yahanさんがご自宅を訪れて約3時間。この日は、少し時間が延びたようだ。
煮込みハンバーグ だし汁仕立て、厚揚げの肉みそ 麻婆風、モロコシ真丈、卵豆腐、出汁ポテトサラダ――。
大人向けの味付けと、子供が食べられる味付けと作り分けられて10品目。佐々木さん夫妻に加え、子供も食卓に集まってくる。
「レンコンとオクラの焼き浸しは、早めに食べた方がいいですね」「冷蔵、冷凍保存したものは、基本的には再加熱して食べてください」。Yahanさんが、作り置き料理を1品ずつ説明しながら、消費期限を伝える。「お店と違い、食べるときには自分の手を離れてしまうのが作り置きサービスです。お客様に美味しく、安心して食べてもらえるように説明します。リピーターの方ほど好みの味に合わせやすくなりますし、いい状態で食べてもらえるので、作り手としては嬉しい」と、Yahanさん。
家族団らんに家事支援サービスの料理が花を添える。

料理の説明と保存期間などについて説明するYahanさん(左)