共働きが当たり前の富山で家事支援をもっと身近に
中央ケアーサポートが向き合う「頼みたいけれど頼めない」の壁
共働きが多い富山県で、掃除や調理などの家事支援サービスを提供する中央ケアーサポート。利用ニーズが高まる一方、他人を自宅に入れることへの抵抗感や、サービスを担う人材の不足といった地方ならではの課題もあります。30年以上、富山市を中心に事業を展開している中央ケアーサポートの水上克美社長に、地域における家事支援の現状や利用者のニーズ、今後求められる人材について聞きました。

記事のポイント
- 高齢化を見据え、入院患者への付き添いから事業を開始
- 共働き家庭では、献立づくりや買い物、調理まで任せられる「作り置き」のニーズが高まっている
- 家事支援は、家事の負担だけでなく、離れて暮らす家族の安心や心のゆとりを生み出す
- 地方では、自宅に他人を入れることへの抵抗感や移動、人材確保がサービス普及の課題
- 福利厚生として家事支援を導入することは、従業員が仕事と家庭生活を両立する支えになる
高齢化を見据え、家政婦紹介からスタート
中央ケアーサポートの創業は1990年です。高齢化が進む社会を見据え、水上社長の母・みさ子さんが家政婦紹介事業を始めました。当時は、病院に入院する患者に家政婦が付き添い、水分補給や着替えなど身の回りの世話をする仕事が多くありました。在宅で暮らす高齢者の家庭を訪れ、食事の用意や掃除をすることもしていました。まだ、介護保険制度などがない時代のことです。
水上社長自身は、もともと音楽大学を卒業し、ピアノ講師や伴奏ピアニストとして働いていました。集金や電話対応など会社の仕事を時折手伝ううちに、徐々に事業に関わるようになり、中央ケアーサポートに入社しました。その後、入院患者への付き添いが原則として行われなくなり、2000年には介護保険制度が始まりました。同社も社会の変化に合わせて事業を広げ、現在は家事支援のほか、訪問介護や家政婦紹介を手がけています。それぞれの制度やサービスを組み合わせ、利用者の暮らしに合わせて支援できることが同社の強みです。
掃除だけでなく、家族の安心にも
中央ケアーサポートの家事支援を利用する人にはシニア世代も多くいます。離れて暮らす子どもから「最近、高齢の親が家事をするのが難しくなってきた」「定期的に様子を見てほしい」といった相談が寄せられることもあります。高齢の夫婦だけで暮らしている家庭や、配偶者を亡くして一人暮らしになった人に、掃除や食事の支度を支援するケースもあります。スタッフが定期的に訪問することは、家事の負担を軽減するだけでなく、利用者の様子を確認する機会にもなります。
水上社長は、「掃除をすることだけが目的ではありません。スタッフが伺うと、利用者の方がお話ししたくて、いろいろなことを話してくださることもあります。離れて暮らすご家族にとっても、定期的に訪問する人がいることは安心につながります」と話します。
共働き家庭では「作り置き」のニーズも
近年は、共働き家庭からの依頼も少しずつ増えています。富山県では、夫婦ともに働くことが一般的です。会社勤めをしながら農業を手伝う家庭もあり、女性が働くことは昔からごく自然なこととして受け止められてきました。かつては、同居する祖父母が食事の支度や子どもの送迎を担う家庭も多くありました。しかし、核家族化が進み、家族だけでは家事や育児を支えきれないケースが増えています。
共働き家庭からの依頼で多いのが、食事の準備です。特に、数日分のおかずをまとめて作る「作り置き」へのニーズがあります。献立を考えるところから買い物、調理まで全て任せたいという家庭もあれば、冷蔵庫にある食材を使ってほしい、肉じゃがや焼き魚など希望する料理を作ってほしいという家庭もあります。予算や家族の好み、必要な品数を事前に聞き取り、それぞれの希望に合わせて対応します。
「毎日の食事は、共働き家庭にとって大きな負担です。今日は何を食べるのか、誰が用意するのかが、夫婦げんかのきっかけになることも。家事支援を利用することで、家事だけでなく、気持ちの負担も軽くできると思います」と水上社長。家事支援は単に家事を代わりに行うだけでなく、家族が一緒に過ごす時間や心の余裕を生み出すことにもつながります。
関心はあっても、利用までには壁
一方、家事支援に関心を示す人が、必ずしも実際の利用につながるわけではありません。水上社長は、地方ならではの心理的なハードルがあると話します。
「知り合いがスタッフとして来たらどうしよう、家の中を見られて、散らかっていると周囲に言われたら嫌だ、と心配される方がいます。もちろん守秘義務は徹底していますが、顔の見える地域だからこその警戒心はあります」
都市部と比べ、地域の人間関係が近いことは、暮らしの安心につながる一方で、自宅に他人を入れることへの抵抗感にもなります。
また、「家事は自分や家族で行うもの」、「お金を払って人に頼むくらいなら我慢した方がよい」といった意識も残っています。家事支援を使いたいという気持ちはあっても、申し込みに踏み切れない人は少なくありません。ただし、一度利用した人は、長く継続する傾向があります。中央ケアーサポートでは定期利用が中心で、週1回から月1回まで、家庭の事情に合わせて利用できます。家事支援を地域に根付かせるためには、サービスの内容だけでなく、安心して人を迎え入れられる仕組みや、利用者との信頼関係づくりが欠かせません。
スタッフは車での移動が必須
地方で家事支援を提供する上では、移動も大きな課題です。中央ケアーサポートでは、利用者宅への訪問は自動車が基本です。公共交通だけでは訪問が難しい地域も多いため、スタッフには普通自動車運転免許と自家用車が求められます。会社では、自宅から訪問先までの距離や移動時間を考慮し、効率よく回れるようにシフトを組んでいます。
水上社長は「家事が得意な人を配置すればよいわけではありません。料理が得意か、掃除が得意かということに加えて、利用者との相性や希望する時間、移動距離まで考えてマッチングしています」とします。
都市部と比べて1件ごとの移動距離が長くなりやすく、ガソリン代もかかります。物価や人件費が上昇する中で、利用しやすい料金を維持しながら、スタッフの待遇や事業の継続性を確保することも課題となっています。
増えるニーズに人手が追い付かない
中央ケアーサポートへの家事支援の依頼は増えていますが、スタッフの数は十分に増えていません。希望する曜日や時間、地域に対応できるスタッフが見つからず、依頼を断らざるを得ないこともあります。
現在働いているスタッフは30代から80代まで幅広く、中心となっているのは60代から70代半ばです。子育てを終えた人や、定年退職後も社会とのつながりを持ちたいと考える人が、これまでの家事経験を生かして働いています。週1回、1時間からでも働けるため、体力や生活に合わせて仕事を始められます。希望すれば、複数の家庭を担当し、週に何日も働くことも可能です。
一方で、家事経験があれば誰でもできる仕事ではありません。「一番大切なのは人柄です。掃除や料理の技術だけでなく、人柄のよいスタッフが選ばれます」と水上社長は指摘します。家庭ごとに家事の方法やこだわりは異なります。自分のやり方を押し付けず、利用者の希望を聞きながら対応する姿勢が求められます。
中央ケアーサポートでは、掃除や調理の手順、衛生管理、利用者との接し方などについて研修を行っています。家庭料理の経験があっても、その経験だけで現場に出るのではなく、会社の基準を学んだ上で、それぞれの得意分野を生かしてもらいます。また、スタッフが利用者との関係で困った場合には、会社が間に入って対応します。家庭の中に入る仕事だからこそ、利用者だけでなく、働く人を支える体制も整えています。
家事支援を働き続けるための生活基盤に

中央ケアーサポートでは、企業の福利厚生として家事支援を利用できる仕組みにも力を入れています。すでに、利用料金の一部を企業が負担する形で導入している企業もあります。
従業員が仕事と家庭生活を両立するためには、育児や介護だけでなく、毎日の掃除や食事の準備といった家事の負担にも目を向ける必要があります。共働きが多い富山だからこそ、水上社長には、家事支援の利用を多くの家庭に広げたい思いがあります。
「家事を外に頼んでもよい、という考え方がもっと普通になってほしいです」と水上社長。顔の見える地域のつながりを大切にしながら、家庭の外にも新たな支え手をつくる。中央ケアーサポートは、地域の暮らしに合った家事支援の形を模索しています。







