ライフデザイン経営 実践企業シンポジウムを都内で開催
経済産業省は2026年2月17日、千代田区・日比谷コンベンションホールで「ライフデザイン経営 実践企業シンポジウム~人的資本経営のヒントを探る~」をテーマに、ライフデザイン経営を実践している住友生命保険、銚子丸、オンワードホールディングスの担当者らが登壇するシンポジウムを開催しました。各社の取り組みを紹介するパネルディスカッションのほか、ライフデザインの支援サービスを体験できるイベントを実施しました。
【政策説明】ライフとキャリアを両立するために
冒頭には、経済産業省サービス政策課の西川奈緒課長が、働き手の人生設計を支援するライフデザイン経営の意義や重要性について説明しました。

西川課長は少子化の進展や人手不足が深刻化する中で、「多様な人材の活躍に向けた環境整備を進めていただくことが非常に重要です」と説明。個人が主体的・自律的に人生の計画を立て、意思決定しやすくするには、必要な情報や気づきが重要です。ライフデザインは、学び直しやスキルアップ、ライフイベントを見据えた資金計画などに役立つ知識や情報の提供を通じ、キャリアとライフの両立につなげます。
経済産業省は2024年度、企業や自治体、教育機関と連携した実証事業を行いました。実証事業では、本シンポジウムの後半で実演する、個人のライフデザインをサポートする事業を展開するNEXERA(ネクセラ)やIBJ、特定非営利活動法人manma、ソニー生命保険などが参加し、サービス開発や効果検証を行いました。
*「ライフデザインを支えるサービス~実証事業編~」
(https://lifestage-service.go.jp/lifedesign/service/)
実証事業の利用者アンケートでは、世代を問わず「どのような人生を送りたいかが明確になった」「これから先の人生の展望は明るいと思うようになった」といった効果が確認されました。また、実際に、ライフデザイン支援に取り組んでいる企業では、従業員エンゲージメントや男性育休取得率、採用の応募倍率などが高い傾向が見られたほか、業績向上につながった事例もあります。
*「ライフデザインで会社が変わる」
(https://lifestage-service.go.jp/lifedesign/kawaru/)
西川課長は「企業がライフデザインサービスの導入などライフデザイン支援を行うことは、従業員のエンゲージメントの向上につながり、結果的に企業の業績向上にも寄与します」と話しました。経済産業省としては、先進事例の発信やWebコンテンツを通じて、ライフデザイン経営の普及を今後も後押ししていく方針です。
ライフデザイン経営がもたらすものとは?~パネルディスカッション
パネルディスカッションでは、「ライフデザイン経営がもたらすものとは?」をテーマに住友生命保険のエグゼクティブ・フェロー兼人財共育本部事務局長の山田哲之氏、オンワードホールディングス人財Sec.課長代理の青木莉菜氏、銚子丸経営戦略室副室長の三浦正嗣氏の3人が自社の取り組み事例について説明しました。
■住友生命――「ともに育ち、選び合う」関係へ転換する人的資本経営
住友生命は、人的資本経営を「人財=宝」と捉え、経営の中心に「人財教育」を据えています。山田氏は、相互会社としての支え合いの精神を土台にしつつ、「変化の激しい時代に人の活力をどう取り戻すかが課題だった」と振り返ります。

転機は2021年のトップ交代です。高田幸徳社長は自ら人財教育本部長を務めると宣言し、「会社と職員がともに育ち、選び、選ばれる関係」という理念を掲げました。会社は戦略や人財像を見える化し、職員も目指したいキャリアやライフ面の事情などをオープンにしました。対等でフェアな関係を築くことを目指しています。
社長自らのタウンホールミーティングや対話の積み重ねにより理念を浸透させることを進めています。キャリアを中心に据えた五つのウェルビーイングの実現を目指し、自己啓発支援も整備しました。その結果、20代のエンゲージメントは男女ともに10ポイント以上向上。人に投資する経営が、確かな成果を生み始めています。
■オンワード――「働き方をデザインする」ことで生まれるイノベーション

オンワードは、働き方改革を「働き方デザイン」と位置づけています。ファッションを生み出す企業として、働き方も自ら設計するという発想です。青木氏は、体力勝負の現場も多い業界だからこそ、誰もが働き続けられる環境づくりが出発点だったと語ります。同時に、多様な人材こそが新しい価値を生むという問題意識がありました。
象徴的なのが、13種類から勤務時間を選べる「シフト選択制」です。育児中の社員のフルタイム復帰や、私用に合わせた柔軟な働き方を可能にしました。11時間の勤務間インターバルや10連休取得推進制度も導入し、属人化を防ぐ組織づくりを進めています。
その成果として、多様なメンバーが関わる新ブランドが好調に推移しています。青木氏は「最終ゴールはイノベーションです」と強調します。制度整備から風土醸成へ。働き方のデザインが企業の競争力を高めています。
■銚子丸――“休む覚悟”が生んだ生産性向上と定着率改善

首都圏を中心に展開する回転寿司チェーンの銚子丸は、長時間労働と高い離職率という課題に正面から向き合ってきました。かつては大量採用・大量離職の状態が続き、労働基準監督署の是正指導も受けていました。
転機となったのは、店休日の導入です。三浦氏が「象徴的な一手」と語るように、売上減のリスクを覚悟して店休を設定しました。「休んでいい」というメッセージが現場に浸透し、店長も本当に休める環境が整いました。営業時間短縮や勤務間インターバルの導入も進め、働き方を見直しました。
さらに、勤怠管理の徹底や固定残業時間の圧縮、賃上げ、技能給制度の導入などを実施しました。女性社員は大幅に増え、女性店長も誕生しました。離職率は改善し、時間当たり売上も上がりました。「やった分だけ評価される仕組みに変えました」と三浦氏。改革は生産性と定着率の向上につながり、持続的成長への土台を築いています。
【実演】4事業者のライフデザインサービスを会場で紹介
後半には、2024年度、経済産業省の実証事業で働き手のライフデザインをサポートするライフデザインサービスの開発・実証などを行った事業者から、NEXERA、IBJ、manma、ソニー生命保険の4社が企業の社員研修向けに提供しているサービス内容を紹介し、来場者にその一部を体験していただきました。
*ライフデザインを支えるサービス~実証事業編~
(https://lifestage-service.go.jp/lifedesign/service/)
■ボードゲームでライフデザインを体感(NEXERA)
NEXERAは、ゲームを通してキャリアとライフがつながる体感が重要だと説明しました。独自開発したゲーム「キャリアメーカー」では、仕事、家族、健康、余暇を軸に、自身の選択がキャリアとライフにどう影響が出るかを疑似体験できます。NEXERAの泉野航平氏は、「会社でなかなか知られていない制度などを知る機会にもなり、キャリアとライフの行動変容、意識変容につながります」と話しました。

■知らなくて選べなかったをなくす(IBJ)
IBJでは、自治体等と連携し企業向けライフデザインセミナーを開催しています。IBJの森宏樹氏は「選択肢は多様でさまざま。正しい情報を知ることで、自分らしい選択ができます」と話し、クイズ形式でライフデザインに関わる情報を来場者に伝えました。ライフとワークが相乗効果を出す「ワークライフシナジー」という考え方などを紹介しました。

■4つの「L」で考える5年後、10年後(manma)
manmaは、大学生や若手社会人向けのライフデザイン研修を実施しています。この日は、大手企業の若手社員を対象に行った「4Lワーク」という研修の事例を紹介しました。4Lワークは、仕事、愛、学習、余暇の4つの観点から10年後の自分を考えるものです。manmaの越智未空氏は「会社として従業員個人のことにどこまで踏み込むか、制度は整えているけれどまだやることがあるかなど、モヤモヤも多いと思います。若い社員の意識変容を起こすには、多様な視点からの意見を聞き、自分の考えを深掘りすることが重要です」と話しました。

■シミュレーションでライフを実感(ソニー生命保険)
ソニー生命保険は企業や学生向けに行っているライフプランニングのシミュレーションについて解説しました。ライフプランニングは、人生の目的や優先順位を明確にし、将来のお金の不安を「見える化」します。シミュレーションは、グループディスカッションなどで議論した仮想の家族とそのライフスタイルを想定し、体験していきます。この日は、子ども2人がいる想定で人生を設計した場合、働き方や投資などを変化させることで、老後資金を改善できる例を紹介しました。ソニー生命保険の庄司公洋氏は「将来の赤字をどうやって改善するか、研修参加者に考えてもらいます。将来を見据えることで、今のうちに様々な手立てを打つことができるようになります」と話しました。

*各社のサービスはこちらでご覧ください。
ライフデザインを支えるサービス~実証事業編~
(https://lifestage-service.go.jp/lifedesign/service/)
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